ばね指とは

手や指には腱というスジが通っていて、それによって指を曲げたり伸ばしたりすることができます。腱(屈筋腱)は前腕の筋肉に引っ張られて動きますが、この時に腱を包んでいる鞘(腱鞘)と摩擦を起こします。

この摩擦に体質や加齢や手の使い過ぎなどが重なると、腱の周囲に炎症が起き、指の付け根に痛みや腫れ、熱感を生じます(この状態を腱鞘炎と呼びます)。これが慢性化すると腱が変性して膨らんだり、腱の癒着が起こったり、腱鞘のトンネル部分が狭くなってきます。

ばね指とは、指を動かすときに膨らんだ腱が狭くなった腱鞘のトンネル内をうまく通れずに、カクンカクンとばねのような動きをしたり、指が曲がらなくなったり、しっかり伸びなくなるまで腱鞘炎が悪化した状態です。(図1)

ばね指 腱の炎症図

ばね指 イメージ図

一般的に高齢の女性に多く、親指や中指に発生しやすいです。また、手をよく使う職業の方、妊娠時や産後、更年期の方や、糖尿病、関節リウマチや透析など基礎疾患がある方にも発生しやすいといわれています。全部の指が罹患したり、手根管症候群を併発したりもします。

検査と診断

ばね指の診断は、最初に述べた典型的な症状と、指の付け根の腫れや痛みでほぼ診断することが出来ます。ごく稀に、ガングリオンなどの腫瘍や変形性関節症、伸筋腱脱臼などにより同様の症状を起こしますので、レントゲンやMRI、超音波(エコー)による検査を行うこともあります。
また、関節リウマチとは異なる疾患ですが、疑われる場合には血液検査を行います。

治療法

1.保存治療

治療はまず保存的治療から行うことが一般的です。保存的治療には、安静、内服、外用(湿布や塗り薬)、ステロイド注射などがあります。

初期の治療として、手をできるだけ使わないで安静にしてもらい、内服薬や外用薬を使いながら、徐々に痛みやばね現象が軽快していくことを期待します。時には副木で固定したりします。しかしながら、仕事や家事などで手を使えないことは非常に不便ですし、痛みの強い方には不都合な場合があります。

その時は、ステロイド注射で直接的に腱鞘内の炎症を抑える方法が効果的です。ステロイドは炎症を強く抑える作用があり、比較的効果が持続する薬です。ただし、ステロイド注射を短期間に頻回に行うと腱が弱くなって(変性して)切れてしまうことがあり、注射を受けたことがある方は申し出をお願いします(いつ頃、どの指に、何回ぐらい)。

2.手術治療

保存療法で症状が改善しない場合に手術を検討します。手術前に局所麻酔を行い、だいたい10分から15分ぐらいで終わる外来日帰り手術です。

手術は、腱鞘に切れ込みをいれて、狭くなったトンネル部分が開放する方法です。腱の通りがスムーズになるので、術中に可動域やばね症状の改善を確認して、手術を終了します。

ばね指の手術図

当院では、保存的療法で改善できない患者さんの紹介も多く、ばね指の手術は日常的に行われています(年間約80例程度)。
早期復帰を望まれる方は一度ご相談ください。