肩腱板損傷とは


肩の関節のしくみ

肩関節は、肩甲骨の関節窩(かんせつか)(くぼみ)と上腕骨骨頭でつくられる肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)と、肩甲骨の肩(けん)峰(ぽう)や三角筋と上腕骨骨頭の間でつくられる肩峰下滑液包(第二肩関節)でできています。

肩はこの肩関節が動くのと同時に肩甲骨が胸郭(きょうかく)の上をすべり動く事で、バンザイをしたり、棚の上のものをとったり、髪を整えたり、背中をかいたり、洋服を着たりなど様々なはたらきをおこなう、人間の関節の中で最も大きく動く関節です。

関節を動かすためには、筋肉が必要です。筋肉には関節に近いところにあって、関節を安定化させるインナーマッスルと、大きくて強い力を持ち関節を動かすアウターマッスルがあります。皆さんの肩口に盛り上がっている筋肉は三角筋といい、典型的なアウターマッスルで肩を上げる運動をします。

一方、関節周辺には棘上筋(きょく)、棘下筋、肩甲下筋、小円筋など小さなインナーマッスルがあります。このインナーマッスルは上腕骨に腱(けん)となり付着するのですが、一つ一つの筋肉の腱ではなく一体となり板状になって肩関節を包むように付着します。これを腱板(けんばん)と呼びます。

腱板がはたらくことで上腕骨は関節窩に押しつけられて安定し、そこに三角筋が収縮して肩が上がります。よって腱板がはたらかなくなると肩が上がらなくなります。

腱板はどうして損傷するのか

腱板は骨(肩峰)と靱帯(烏口肩峰靱帯(うこうけんぽうじんたい))のトンネルをくぐって仕事をしています。

しかし、長年肩関節を使っていくと、骨の先端がとがってきたり、余計な骨のとげができたりします。この状態で腱板が行ったり来たりを繰り返しているうちに、自然と腱板がすり切れてきます。ある意味、人体の中の弱点なのです。

その後、徐々にすり切れの程度が大きくなったり、すり切れているところに打撲や引っ張りの外力が加わって腱板は断裂します。

腱板を損傷した場合の症状

腱板は板状ですので、多少すり切れたからといってすぐに症状はでてきません。最近報告された論文では、痛みや症状がなくても、60歳以上であれば多くの方で腱板がすり切れているとされています。

しかし、徐々にすり切れが大きくなると、断裂部位は炎症を起こし痛みの原因となります。特に典型的な場合は夜に痛みますし、痛い方の肩を下にして眠れないなどは良くいわれる症状です。痛みと同時に肩が上がらなくなります。

肩が上がらなく理由は二つあり、一つは腱板が断裂する事で肩関節を安定させる力源がなくなり、その結果三角筋が作用しても肩を上げる力が加わらなくなるためで、もう一つは肩を上げる際に腱板の断裂部位が肩峰にこすれて強い痛みを発するためです。

肩を上げる途中はものすごく痛いけど、あるところまで上げてしまうと痛くなくなるといわれる方も大勢おられますが、これは腱板断裂部と肩峰がこすれあっている間が痛いという現象が起こっているからです。

診察と検査

まずは問診をおこない、レントゲン検査をします。レントゲン検査によって腱板は見えませんが、腱板断裂の原因となる骨の変形や余計な骨のとげはよく分かります。

続いて診察をおこない、肩の動きの具合を確認し、痛みのある所を特定します。あえて痛みが起こる動作をすることがありますが、診察のためですのでご協力ください。

腱板そのものの損傷程度を診断するために、超音波・MRI・造影検査を追加することがあります。超音波は手軽におこなえますが、画像が荒いのでまずは大まかな診断を下すためにおこないます。MRIは超音波より詳細な所見がみつかります。造影検査は肩関節にレントゲンに写る造影剤を注射することで、詳細に病巣を観察することができます。

治療法

腱板が切れているからといって、すぐに手術をする必要はありません。多くの患者さんは腱板が徐々にすり切れてくることによる痛みが主な症状です。断裂部で起こっている炎症が痛みの原因ですので、飲み薬や貼り薬ときには注射で炎症を抑えて痛みを取り除こうとします。

しかし、痛みの程度が強くて薬による治療が効かない時や、怪我による腱板断裂の時には手術をお奨めすることがあります。肩を強く打撲したり、肩を引っ張る力により急に腱板が断裂した時は、怪我をする前までは普通に動いていた肩が、急に上がらなくなって大変困ります。

手術は入院を必要とします。まず全身麻酔をかけて肩に4cm程の切開を加えます。それから骨の変形や余計なとげを切除して、断裂した腱板を骨に縫いつけます。スクリューを骨に埋め込みアンカーとし、そこに腱板を縫いつけることで、腱板が骨に強く固定されます。

ただし、修復した腱板に緊張が加わると、せっかく縫いつけた部分が引きちぎれてしまいます。肩を上げておくと縫合部が緩んで緊張がかからなくなり、腱板の修復に有利にはたらきます。そこで肩を90度に上げておくために外転装具を使用しています。

術後1週ほどで抜糸を行ない、肩を動かす練習をはじめます。最初はリハビリの先生の補助をうけてゆっくりと肩を上げていきます。術後2週くらいで自分の力で肩を上げる練習を始めて、徐々に外転装具の角度を降ろしていき、術後3-4週をめどに外転装具を外していきます。

入院期間はどうしても1ヶ月以上かかることが多いようです。その後外来治療に切り替えていきます。痛みは徐々に軽くなり、肩の動きも段階的に回復していきます。

類似疾患

類似する病気としては、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)、上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎、上腕二頭筋長頭腱断裂、石灰沈着性腱板炎などがありますので、医師の診察をうけ正しく診断してもらうのがよいでしょう。

文:徳永 真巳