肩関節周囲炎(五十肩)とは

肩関節周囲炎(五十肩)とはどんな病気なのか

肩の痛みで外来に来られる患者さんのなかで、“肩が痛くて動かしにくいんですけど、これって五十肩でしょうか?”と尋ねてこられる方がよくいらっしゃいます。

中年以降の人が、肩が痛くて動かしにくくなった場合、以前から一般的に「五十肩」と呼ばれてきました。しかし、「五十肩」という言い方は医学専門用語ではありませんので、病院では「肩関節周囲炎」といったり、肩がガチガチになって動かない場合は「凍結肩」という病名を用いたりします。

ただし、似たような症状をきたす、原因の明らかな他の疾患(腱板断裂 ※1、石灰沈着性腱板炎 ※2、インピンジメント症候群 ※3、変形性肩関節症 ※4 など)がたくさんありますので、それらをすべて除外した上で「肩関節周囲炎」と診断することになります。

おおまかに言えば「五十肩」とは、“特に原因がはっきりしない中年以降におこる肩の痛みと運動制限をきたす症候群”なのです。

※1 腱板断裂:腱板が損傷しているため、バンザイをするときに痛みが出ます。
※2 石灰沈着性腱板炎:腱板にカルシウム塩が沈着して急な炎症を起こし、激しく痛みます。
※3 インピンジメント症候群:バンザイをする際、上腕骨頭が肩峰に衝突して痛みを生じます。
※4 変形性肩関節症:肩関節の軟骨がすり減って炎症が起こり、痛みが出て動きが悪くなります。

どんな症状がでるのか

肩関節周囲炎(五十肩)のおもな症状は、肩の痛みと動かしにくさ(拘縮)です。日常生活のなかで以下のような症状がでます。

じっとしているときの痛み(安静時痛)

腕を動かさない状態でもズキズキ肩や腕が痛む
夜間寝ているとき、寝返りしたり肩を下にしたりすると痛みで目が覚める

動かす時の痛み(運動時痛)と動かしにくさ(拘縮)

高い所にある物をとろうとしたら腕が挙がらない
上着を着たり脱いだりするのがつらい
背中のファスナーを開け閉めしづらい
整髪しにくい

病期は大きく3段階に分けられ、症状が徐々に変化していきます。まず、発症して間もない頃は痛みが強く、動かす時はもちろんのこと、夜間じっと安静にしていても強い痛みが出ます。痛みで肩を動かせないため、首から肩甲骨にかけての過負荷による痛みを伴ったりすることもあります。

しばらくすると、強い痛みは落ち着きますが、肩の動きが悪くなり、拘縮がおもな症状になります。肩を動かすとつっぱるような鈍い痛みが生じます。その後回復期となり、肩の動きは徐々に改善し、痛みも軽くなってきます。

検査と診断

X線やMRI検査などで、肩関節周囲炎(五十肩)に特徴的な所見はありませんが、これらの検査や診察を行った上で他の疾患(前述)を除外し、最終的に「肩関節周囲炎」と診断されます。

治療法

保存療法(手術しない治療法)

病期によって治療法は異なってきます。初めの痛みが強い時期は、安静を保ち、肩への機械的刺激を極力減らすことが重要です。とにかく痛みが出るような動きを避け、場合によっては三角巾で固定します。夜間就寝時には、肩から肘の後ろに座布団などを敷き、枕を抱えるようにして休むと効果的です。

病院では、まず痛みを抑えるために、鎮痛剤や湿布の処方を行ったり、炎症を抑えるためのステロイド剤や潤滑効果のあるヒアルロン酸の注射を行ったりします。拘縮がおもな症状になってくると痛みは落ち着いてきますので、その頃を見計らって、肩の動きを良くするためのリハビリを開始します。

基本的にはホームプログラムを中心として、自主的にストレッチを行いながら経過をみていきますが、動きが悪い場合は理学療法士によるリハビリを行います。肩をしっかり温めて局所の循環を良くすることも効果的です。

手術療法

保存療法でなかなか改善がみられない場合、とくに動きが極端に悪い「凍結肩」には手術療法を行います。現在当院で行っている方法をご紹介します。

関節授動術

全身麻酔をかけた状態で、肩関節を強めにストレッチして関節の動きを取り戻します。

鏡視下関節包切離

肩関節内を内視鏡で観察しながら、硬く縮こまった関節包を電気メスにて切開し、関節内を広げて肩の動きを良くします。

最後に

“肩が痛くて上がらない”といった気になる症状があれば、“こりゃあんた、五十肩に違いないから早く病院行った方がいいわよ!”と言われる前に、遠慮なく外来担当医にご相談下さい。