変形性膝関節症とは

変形性膝関節症とは、自動車のタイヤがすり減っていくように、関節軟骨や半月板も歳をとるに従ってすり減ってきます。歩くときには膝の内側の関節のほうが外側よりも負担が大きいため、内側の関節軟骨がよりダメージを受けます。さらにO脚だと内側にかかる負担はより大きくなります。

関節軟骨がすり減って、骨に直接体重がかかるようになると徐々に骨が変形してきます。これが変形性膝関節症という病気です。変形性膝関節症になると、軟骨がすり減った部分に体重がかかったりして痛みを感じます。一般に軟骨のすり減りや骨の変形が強いほど痛みはひどいようです。

変形性膝関節症の95%以上が内側の関節の障害なので、以後は内側の関節の変形についてお話しします。

どんな病気か?

中高年に最も多く見られる膝関節疾患であり、加齢により膝関節機能が低下して、特に軟骨がすり減ることで関節の変形や破壊が徐々に生じる疾患です(図)。肥満や遺伝的素因が原因になることもありますが、骨折や靭帯・半月板損傷などの外傷や感染の後遺症で発症することもあります。

国内で症状を伴う患者数は約800万人であり、男女比は1:4と女性に多くみられます。

症状

初期は、階段の昇り降りや歩きはじめ、座位からの立ち上がりで痛みが起きます。病期が進行すると、関節内に水が貯まることで腫れることもあります。膝関節変形が著明になり、O脚などが目立ってきます。膝関節の曲げ伸ばしが制限されて歩行困難になるなど日常生活が著しく障害されます。

検査と診断

痛みの原因となったエピソードや職歴、スポーツ歴などの問診を行い、痛みの部位や関節の動きを診察します。画像検査としてレントゲン(図)やCT検査、MRI検査でO脚や軟骨のすり減り、関節の変形の程度を評価します。関節リウマチや痛風など他の関節炎の鑑別のために血液検査や関節液検査などを行います。

治療法

治療は(1)軟骨のすり減りの程度、(2)骨の変形の程度、(3)痛みや日常生活の制限の程度によって決定します。

症状が始まって間もないときや軟骨や骨の変形が少ないときには、関節の炎症を治めて痛みを軽くするお薬(消炎鎮痛剤)を飲んでいただくのが一般的です。同時に膝周囲の筋肉トレーニングをして膝のぐらつきを予防したり、膝関節に軟骨を保護する薬や炎症をひかせる薬を注射することもあります。

足底板という装具を使うこともあります。足底板とは内側にくらべて外側が8~10mmほど高くなっている靴の中敷きを想像してください。これを敷いて歩くと体重のかかり具合がかわり、内側の負担を外側にずらすことができます。

保存療法では消炎鎮痛剤などの薬物療法や膝周辺の筋力トレーニングなどの運動療法があります。また関節内へのヒアルロン酸注射や膝の内側に体重がかかることを減らすために、靴の中敷きを調整する足底板という装具を用います。保存療法の積極的な介入により多くの症例で症状緩和が可能です。

しかしこのような保存療法でも痛みが改善しない場合は、手術療法を考慮します。変形を矯正する膝関節周囲の骨切り術や傷んだ軟骨を金属などの人工材料で置き換える人工膝関節置換術(図)などの手術方法があります。

関節軟骨のすり減りや骨の変形がひどい場合

O脚をX脚に矯正する手術を選択します。

関節軟骨がすりきれて骨が露出している場合

人工関節置換術を選択することがあります。