変形性股関節症とは

症状

変形性股関節症の主な症状は、股関節(脚の付け根)の痛みと機能の障害です。痛みや股関節の動く範囲(可動域)制限が生じるために、日常生活動作が障害されます。

また、長い時間立ったり歩いたりすることが困難になり、関節症が進行すると運動しない場合でも常に痛むようになり、夜間の痛みも生じます。

階段昇降やしゃがみこみ、立ち上がりが不自由になり、可動域制限が進行すると足の爪切りや靴下の着脱、正座などが困難になります(図1)。

▲図1

どんな病気か?

股関節は、骨盤と大腿骨により構成される球関節です。変形性股関節は、股関節を形成している関節軟骨や骨が傷んでしまうことによって、股関節痛や機能障害を引き起こす病態です。

単純レントゲン診断によるわが国の変形性股関節症の有病率は1.0~4.3%で、120万~510万人になります。男性は0~2.0%、女性は2.0~7.5%と女性に多くみられます。発症年齢は平均40~50歳で、原因は寛骨臼形成不全(大腿骨頭の受け皿になるお椀の形をした臼蓋が浅い)が80%以上といわれています。

他の危険因子は重量物作業や長時間の立ち仕事などの職業や肥満などが発症の危険因子です。近年の高齢化社会を背景に、明らかな原因となる病気がなくても年齢とともに股関節のクッションの役目を担う軟骨が傷んで発症する方が増えています(図2)。

▲図2

診断

痛みの部位や関節の可動域や左右の脚の長さの差(脚長差)、歩き方(歩容)を診察します。通常はレントゲン(図3)で診断を確定します。

関節の隙間が狭くなり、関節軟骨に接する骨の突出(骨棘)が形成されたりすることで次第に変形していきます。またCT検査やMRI検査などの画像検査を行うことで、関節内に水が溜まっていることや軟骨のすり減りなど関節の変形の程度を早期から診断できます。

▲図3

治療法

保存療法

保存療法では、股関節にかかる負荷を減らす生活指導を行います。重量物作業や体重など股関節にかかる過度の負担を減らすことは重要です。痛みのある方と反対側に杖をついたりするなど歩行補助具(杖・歩行器)は疼痛、バランス、歩行能力の改善が期待できます。

運動療法は痛みや機能改善に有効です。運動の種類としては有酸素運動や股関節周りの筋力増強訓練、ストレッチが有効です。また浮力が働いて関節の負担が少なくなるプールでの水中運動も推奨されています。消炎鎮痛剤などの内服により、疼痛緩和と日常生活動作の改善が得られます。

手術療法

上記のような保存療法でも痛みが改善しない場合は、手術療法を行います。大腿骨側と寛骨臼側との衝突(インピンジメント)に起因する病態があり、それに対する関節内治療として関節鏡視下手術は有用です。青・壮年期から中年期にかけて比較的初期の股関節症に対しては、関節適合性を向上させる骨切り術(自分自身の関節と軟骨を残す手術:関節温存術)は症状緩和および病期進行の予防に効果があります。

人工股関節置換術

変形が進行した場合でも股関節を金属などの人工材料で置き換える人工股関節置換術(図4、5)は疼痛の改善に大きな効果があり、歩行機能、スポーツ活動、心肺機能、満足度などのQOL(quality of life:生活の質)の向上に有用です。なお人工股関節は手術手技が安定し、術後成績が非常に良好であることから、20世紀にもっとも成功した外科手術のひとつともいわれています。

当院では人工股関節置換術は年間約100例実施しており、筋肉の傷みや術後の痛みが少ない術式を用いることで、早期の筋力の回復や入院期間の短縮、早期社会復帰が期待でき、様々な術後合併症対策やリハビリを行います。

▲図4

▲図5

その他の股関節の疾患