高度専門医療

福岡整形外科病院は、PRP療法、自家培養軟骨移植術などの新たな治療法を順次導入し、高度かつ専門的な医療を提供しています。

PRP療法

スポーツ整形外科

当院では、2018年9月よりPRP(多血小板血漿)療法を開始しております。PRP療法とは、ご自身の血液から成長因子や細胞を抽出し、患部に直接投与することで、炎症の抑制と治癒が期待できる治療法です。

PRPとは?

血液の中には、傷を治す働きを持つ「血小板」という成分があります。この血小板を高濃度に凝縮し活性化させたものが、PRP:Platelet-Rich Plasma(多血小板血漿)です。PRPにはたくさんの成長因子が含まれていて、細胞の成長を促進する力があります。

当院が使用するPRPは、高濃度の白血球を含むL-PRP(Leucocyte-PRP)です。この力が、人の本来持っている治癒能力や組織修復能力・再生能力を最大限に引き出し、傷んだ関節軟骨・靭帯などの治癒を促すとされています。

PRP療法の見込まれる治療効果

  • PRP療法は、即効性の効果は有りません。組織の修復に伴い、炎症が治まって痛みが軽減するまでに約1ヶ月程度かかると言われており、最も遅い方では約6ヶ月を要しました。
  • 治療効果や持続時間には、個人差があります。

※当院の治療実績:全PRP療法実施者の内、『約50~60%』の方に疼痛改善効果がみられました。

PRPキット

1. GPSRIII STD JPキット ㈱ジンマー バイオメット

「GPS III システム」で分離されるのは、PRPに加えて白血球も多く含むL-PRP(高白血球多血小板血漿)です。白血球は創傷治癒プロセスに複雑に関与しており、組織の治癒に重要な役割を果たしています。

2. APSキット ㈱ジンマー バイオメット

APSは次世代のPRPと言われており、自己タンパク質溶液(Autologous Protein Solution)の略称で患者さんご自身の血液から抗炎症性サイトカインと成長因子を高濃度抽出した溶液です。悪い蛋白質が過剰に存在する関節内に、良いタンパク質が豊富なAPSを注射し、炎症バランスを改善することで痛みを軽くし、軟骨の変性や破壊を抑えようとする治療です。

費用について

部位 PRPキット 主な疾患 投与回数 疼痛抑制
持続期間
価格
関節内 GPSⅢキット 変形性膝関節、半月板損傷の治療で損傷組織の治癒促進 1回 約6ヶ月 99,000円
(1部位)
APSキット
(次世代PRP)
約1年~2年 253,000円
(1部位)
筋腱 GPSⅢキット 上腕骨外側上顆炎、肉離れ、アキレス腱炎、筋損傷の治療 1回 約6ヶ月 99,000円
(2部位まで可)

治療までの流れ

PRP療法の適応となるか、MRI検査及び血液検査を実施します。

※検査とPRP療法を同日中に実施することはできません。また、検査後のPRP投与は最短で翌日に実施することは可能ですが、予約状況により翌日に実施できないこともありますのでご了承下さい。

PRP療法後の流れ

厚生労働省への報告義務があるため、PRP療法実施後も定期的な診察が必要になります。

PRP療法後の受診の目安

治療の流れ

1. 血液採取

患者さんの血液を治療に適した量だけ採り、専用のキットへ移します。

2. PRP作成

血液を特殊な遠心機で数回遠心してPRPを作成します。

3. PRP注射

PRPを注射器で膝に注射します。

対象疾患

PRP療法に関する紹介映像について

当院で行ったPRP療法が、テレビ番組で紹介されました。

放送日
2019年10月27日(日)
番組名
BS-TBS『ひざの痛み解決スペシャル』
 

自家培養軟骨移植術

自家培養軟骨移植術とは

膝や肘などの関節の骨の表面を覆っている軟骨は、関節の動きを滑らかにする役割を担っており、ケガなどで軟骨が失われた場合、歩行困難なほどの痛みを生じることがあります。

なお、軟骨組織には元々血管がなく、それを治すための細胞も細胞を増やすための栄養も供給されないため、一度損傷を受けると自然には治らない組織とされています。

自然治癒が望めない軟骨組織ですが、軟骨細胞には増殖する能力があります。そこで、患者さまの軟骨組織の一部を採取し、軟骨細胞を増殖させる環境で培養した「自家培養軟骨」を、軟骨の欠損した箇所に移植して修復を行うのが「自家培養軟骨移植術」です。

対象疾患について

自家培養軟骨移植術において、日本の公的医療保険の対象となっているのは、「外傷性軟骨欠損症」または「離断性骨軟骨炎」の患者さまで、欠けた軟骨の面積が4cm2以上になります。適応対象外の部位(ひざ以外)の治療には残念ながら使うことはできません。

変形性膝関節症は対象外となり自家培養軟骨による治療は受けることができません。まずは主治医へご相談ください。

自家培養軟骨移植術のスケジュール

費用について

保険適用となります。詳しくは受付までご相談ください。

治療の流れ

ご自身の軟骨組織を少量採取します。(関節鏡での手術)

アテロコラーゲン(コラーゲンの一種)と混ぜて培養し、自家培養軟骨を作成します。

自家培養軟骨を軟骨が欠けたところに移植します。

移植した自家培養軟骨が外れないように脛骨から取った「骨膜」でフタをして縫合します。

 

椎間板酵素注入療法

腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛・坐骨神経痛でお困りの皆様へ

「痛みが続いて辛いけれど、手術までは・・・」と手術には踏み切れない方

「仕事が忙しくて、まとまった休みがとれない」とお困りの働き盛り世代の方

日帰り手術で対応できる治療方法:ヘルニコア(椎間板酵素注入療法)を開始しました。

原則として日帰り入院で注射を行い、治療後しばらく安静にして体調に異変がなければ帰宅できます。

適応する病状がありますので、治療をご希望の方は一度ご相談ください。

*椎間板酵素注入療法は保険適応診療です。

ヘル二コアとは

ヘルニコアとは、椎間板内酵素注入療法に使用する薬剤で、ヘルニアを起こしている椎間板の髄核内に直接注射します。

髄核の構成成分を分解するヘルニコア

ヘルニコアの有効成分コンドリアーゼは、髄核の保水成分(プロテオグリカン)を分解する酵素です。

コンドリアーゼによって、飛び出して神経を圧迫しているヘルニアの髄核内の保水成分が分解され、水分による膨らみが適度にやわらぎ、その結果、神経への圧迫が改善し、痛みやしびれが軽減すると考えられています。

治療後の日常生活の注意点

  • 治療当日は入浴を控えてください。
  • 治療後1週間は腰に負担をかけないよう心がけてください。
    治療後は椎間板の周りの組織に変化が起こっています。日常生活やスポーツ開始時期など詳細は医師に相談してください。
  • 定期的に診察を受けてください。
  • ヘルニコアによる治療を受けた方は再度ヘルニコアの治療を受けることは出来ません。(別の部位も含みます)

 出典・問い合わせ先:科研製薬株式会社

ヘルニコアの治療手順

レントゲン台に横になり体の位置を調整します。X線でヘルニアのある椎間板を確認しながら、針を刺す場所を決めます。

針を刺す位置を消毒します。

ヘルニアのある椎間板内に針を刺し、へルニコアを注射します。

しばらく安静にします(3時間程度)。薬による副作用がないかなどの確認をします。

問題がなければ帰宅できます。※医師の判断で1~2泊の入院となる場合があります。

 

BKP(経皮的椎体形成術)

ご存知ですか?BKP (経皮的椎体形成術)

「背中や腰が痛い・・・」その悩み、「骨折」が原因かもしれません。

骨粗鬆症のため弱くなった脊椎は、軽微な外傷などが原因で、背骨が押しつぶれるように変形する一般的に言う圧迫骨折が生じます。

これを「骨粗鬆症性椎体骨折」といいます。椎体骨折によって難治性の腰痛や背部痛が生じ、日常生活が大きく損なわれることがあります。

当院では、椎体骨折に対する治療法の一つとして、経皮的椎体形成術 (Baloon Kypoplasty [バルーンカイフォプラスティ]) を行っています。

適応

  1. 受傷後数ヶ月以上経過しても腰痛が改善しない場合
  2. 受傷後数ヶ月してから、「脚がおぼつかない」「脚の力が入りにくい」等の下肢麻痺が出現した場合

期待される効果

  • 痛みの早期軽減
  • 生活の質 (QOL) の向上
  • つぶれた骨を骨折前の形に近づける

実際の患者さんのレントゲン写真

手術前

手術後

入院期間と費用

入院期間 費用 (入院費・食事代含む)
経皮的椎体形成術 14日間程度 120万円程度

※ 費用については、高額療養費制度等ありますので、詳しくは受付までお問い合わせ下さい。

治療について

担当医師:富永 冬樹、森 英治

※ 受診方法については、詳しくは受付までご相談下さい。

手術内容

背中に約1cmの傷を2ヶ所加え、骨折でつぶれた椎体に細い針を挿入します。

骨折した椎体の中でバルーン (風船) を膨らませて、つぶれた骨の形をできる限り元に戻します。

骨医療用の骨セメントを詰めます。

骨折の痛みを取り除き、曲がった背骨を可能な限り矯正します。

※手術時間:通常1時間以内

滑膜幹細胞治療

滑膜幹細胞治療

治療について

患者さん本人の滑膜を採取後に、体外で培養し増殖した後に膝関節内に注射をする治療です。培養には患者さんの血液を利用します。

MRI(3D)で軟骨厚さ等の状態を評価

対象疾患

  • 変形性膝関節症と診断された方
  • 投与後1週、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年後の受診が可能な方
    ※厚生労働省への定期報告が必要となります。

治療効果

  • 痛み・膝機能の改善と軟骨厚さの減少を抑制、進行予防などが期待できます。
  • 開発施設(東京医科歯科大学)の臨床試験で75%で改善効果が見られました。
  • 治療効果・持続期間には個人差があります。

治療費用

1膝:1,998,000円(税込)

保険適応外となります。また、生命保険等の先進医療特約には該当しません。

治療スケジュール

1. 診察・検査

これまでの治療内容について問診し、採血・画像検査等実施します。

2. 採血

滑膜を培養するため、事前に400mlの採血を行います。

3. 滑膜採取

手術室で全身麻酔を行い、関節鏡で約0.5gの滑膜を採取します。

※全身麻酔をおこなうため、1泊2日の入院が必要です。

4. 滑膜幹細胞投与

約2週間培養し、外来で膝関節内に注射します。

5. 外来診察・術後診察

1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後の受診が必要です。