肩腱板損傷とは

肩腱板損傷(腱板断裂)とは

肩関節はアウターマッスルである表面の三角筋とインナーマッスルである腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)が協調することによって動きます。アウターマッスルは大きく太いために強い力を発揮し、インナーマッスルとは関節の近くに存在するため関節の安定性を高める機能があります。

肩関節は肩甲骨の関節窩(受け皿)に上腕骨頭がはまっており、インナーマッスルである腱板が働く事により上腕骨が受け皿に押し付けられ安定します。腱板が切れることにより、その安定性が損なわれ、肩をあげる事ができなくなったり、痛みの原因となります。

腱板断裂の原因

腱板が切れる原因としては転倒や落下などや・重たいものを持ったりと急激な肩への負荷で切れてしまう外傷性のものや、加齢性の変化で徐々に腱板が徐々にすり減り切れる変性による断裂、およびそれに軽微な外傷が加わって起こるものがあります。

腱板断裂の症状

症状は肩を挙げた時の痛みや夜間の疼くような痛み、また肩を挙げられないといった症状です。一般の整形外科で四十肩五十肩と診断されることも多く、四十肩五十肩と言われた患者さんの中に腱板断裂の患者さんがいる事はよくあります。

四十肩五十肩は、別名として凍結肩と言われるように少し時間が立つと凍結したように固まって動かせなくなります(拘縮)。これは他の人が肩を上げようとしても硬くなっていて動かせない状態です。

一方で腱板断裂の患者さんは痛みであげられなかったり、自分であげる事はできなくても、拘縮は比較的少ないと言われています。

検査

レントゲンでは腱板は映らないため、正確な診断はできません。正確な診断にはMRI検査が必要となります。

腱板断裂の経過と治療

治療には痛みや可動域制限に対して、切れていない残った腱板の筋力訓練や鎮痛薬の投与、また肩関節への注射などが行われます。しかしながらこれらの治療で切れた腱板が修復されるわけではありません。

腱板とは筋肉が骨にくっつくところが白っぽいスジのようになりそれが板状に集まっているため腱板と言われます。筋肉の損傷(肉離れ)は血の巡りがいいため自然に治りやすいですが、腱板断裂はこの白っぽいスジの部分が骨から剥がれるように断裂するため、自然に治ることは通常ありません。

最近の研究結果では腱板断裂が生じると断裂の大きさ・痛みや肩の上げにくさなどの病状は経時的に進行するとされています。

また切れた腱板の筋肉は有効な活動を行えず、変性していきます。変性とは筋肉が痩せたり(萎縮)、長さが短く縮こまったり(退縮)、中に脂肪が入り硬くなったり(脂肪浸潤)します。変性が進むと切れた腱板を元の骨にくっついていたところまで引っ張り出せず、縫うことが困難となることがあります。

漫然と経過を見ていると断裂の大きさや編成が進行し、症状が高度になった時にはもう手術が困難だったり、手術の成績が落ちてしまうことが考えられます。患者さんの年齢、症状、職業、断裂の具合などを考え、適切な治療を適切なタイミングで考えなくてはなりません。

関節鏡手術

切れた腱板を修復するには手術によってつなげる必要があります。当院では肩関節鏡による腱板修復を行なっており、1cm弱の孔を4〜5箇所で開けそこから内視鏡や手術器具を挿入し手術を行います。アンカーという糸がついたビスを骨に差し込み、糸を断裂した腱板に通して腱板を骨に縫合します。

アンカーは生体内で吸収され骨に置き換わる素材(PLLA)を当院では用いており、レントゲンでは分からず、また一生抜く必要もありません。

大きく皮膚を切り肩を開いて行う一般的な手術に比べ、関節鏡手術は正常な筋肉を剥がさず傷つけずに済むため、身体的な負担が小さく、痛みも軽く、術後の回復も早いなど多くのメリットがあります。

縫合した腱板は縫合糸でずっと支えることを目的としているわけではなく、腱板と骨の付着部がくっつく事を目的としています。生物学的にくっつくには傷の治りと一緒で時間が必要であり、そのため術後の時期に応じたリハビリテーションを行う必要があります。

腱板の縫合部に緊張が加わらないように術後3〜6週は外転装具という脇を開けておく装具をつけておく必要があります。

文:井浦 国生