変形性膝関節症について
「よっこらしょ……あれ、なんだか痛いな。」
一歩踏み出した瞬間や立ち上がる際に、膝の痛みを感じることはありませんか。その症状は、変形性膝関節症の可能性があります。
「年齢のせいだから仕方がない」と諦めてしまいがちですが、適切な治療によって改善が期待できる病気です。
治療の流れ
まずレントゲン検査により骨の状態を確認することから始まります。必要に応じてMRI検査を行い、軟骨のすり減りや半月板の損傷の有無を詳しく調べます。また、リウマチなど他の病気が疑われる場合には、血液検査や関節液検査を行います。
治療は基本的に、飲み薬・注射・装具などによる保存療法から開始します。保存療法を続けても十分な改善がみられない場合には、患者さんやご家族と十分に相談したうえで、手術療法を検討します。
緻密な画像診断
当院では、整形外科専門ならではの視点から、撮影方法にもこだわった画像診断を行っています。寝た状態での撮影だけでなく、立った状態でのレントゲン撮影を行うことで、膝にかかる負担を含めた状態をより正確に評価します。
また、MRI検査では軟骨・靭帯・半月板などの軟部組織を、それぞれ丁寧に確認しています。
人工膝関節置換術
手術療法の一つに「人工膝関節置換術」があります。変性した膝関節を取り除き、人工関節に置き換える手術です。人工膝関節置換術は、痛みの軽減効果が早く、効果が大きいことが特徴で、術後のリハビリテーションも計画的に進められます。
当院では、年間約400件の人工関節置換術を行っており、高齢の患者さんなど、さまざまなリスクを伴う症例に対しても、安全管理に細心の注意を払って治療にあたっています。専門医による周術期管理を徹底しており、術前には心電図検査に加えて、循環器科医師による診察を行います。また、術後は血栓ができやすくなるため、静脈血栓塞栓症の予防を目的とした検査や処置を徹底しています。
安全な麻酔・手術
麻酔医と手術室看護師が連携し、すべての患者さんに対して術前訪問を行っています。
麻酔医は、手術に必要な事項や全身状態の確認を行い、手術室看護師は手術当日の流れや準備、手術室への入室から退室までの流れを分かりやすく説明します。
痛みのコントロール
手術では、下半身麻酔と全身麻酔を併用します。手術中は全身麻酔により眠っている状態のため、痛みを感じることはありません。手術終了後に目が覚めます。手術後の痛みに対しては、注射や坐薬、腰から行う痛み止めの注射など、複数の方法を組み合わせて対応します。
看護師が血圧や体温を測定しながら、痛みの程度や足の動きなどを繰り返し確認しますので、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。
心機能チェックと血栓予防
人工膝関節置換術を受けるすべての患者さんに、循環器医師による術前の心機能チェック(心電図・心臓エコー検査)を行っています。高齢の方や基礎疾患をお持ちの方も安心して手術を受けていただけるよう、全身状態を事前にしっかりと確認したうえで治療に臨みます。
また、人工関節手術の重篤な合併症の一つである「肺血栓塞栓症」を防ぐため、原因となる深部静脈血栓の有無を調べる下肢静脈エコー検査を実施しています。手術前に血栓の有無を確認し、問題がないことを確認したうえで手術を行います。
さらに、手術翌日の起立・歩行開始前にも下肢静脈エコー検査を行い、安全を確認したうえでリハビリを開始します。必要に応じて経過を追って検査を行い、術前から術後まで一貫した血栓予防に努めています
入院・リハビリ
入院中のサポート体制
安心して入院生活を送っていただけるよう、入院から退院までの流れについては、クリニカルパス(標準治療計画表)を用いて説明を行っています。疾患・手術法別のクリニカルパスに基づき、入院中はマンツーマンでのリハビリを実施しています。
病棟では、受け持ち看護師制を採用しており、治療や療養のお世話をはじめ、入院生活全般の相談や調整役として関わります。入院中の悩みや不安、退院後の生活指導についても、受け持ち看護師が中心となってサポートいたします。
また、入院時には現在服用中のお薬を確認し、患者さんのお薬の情報を的確に把握します。手術前に中止が必要なお薬がないか、これから処方されるお薬との相互作用がないかなどをチェックし、安全な治療につなげています。
退院前には試験外泊等を組み込むことで、自宅での不具合についてソーシャルワーカーに相談することも可能です。治療からリハビリ、今後の生活のことまで、一貫して患者さんに即した対応ができることが、整形外科を専門とする当院のモットーです。
マンツーマンでのリハビリ
手術前
手術前のリハビリでは、主に脚の筋力訓練と血栓予防を目的とした運動を行います。また、O脚・X脚などの影響で姿勢の崩れがみられる場合も多いため、可能な範囲で姿勢の調整も行い、手術に備えます。
手術後
手術後は3日目からリハビリテーションを開始します。痛みができるだけ出ないよう配慮しながら、体力の回復状況に合わせて無理のない範囲で進めていきます。術後約3週間で、1本杖を使用して移動できる程度までの回復を目指します。その後は、階段の昇り降りや屋外歩行、日常生活動作の練習を行い、退院後も膝に負担をかけず、安心して生活できるよう支援します。
退院後の生活支援
退院後も安心して生活を送っていただけるよう、パンフレットを用いてわかりやすい説明を行っています。あわせて、入院前の生活状況や住宅環境を確認し、患者さん一人ひとりに合わせた退院支援を行っています。
退院後の生活環境によっては、事前に準備が必要となる場合があります。例えば、浴室やトイレ、段差への手すりの設置、シャワー用椅子や入浴補助用具の購入などが挙げられます。これらの準備については、介護保険や各種福祉制度を利用できる場合もあります。
また、体重の増加は膝に負担をかけるため、人工関節を長持ちさせるには体重管理が重要です。関節への負担を減らすためにも、体重コントロールを心がけましょう。食生活のサポートが必要な方には、管理栄養士による栄養指導を行い、生活習慣改善のお手伝いをしています。
費用と制度
病院の窓口でお支払いいただく医療費のうち、一定の金額を超えた分が戻る「高額療養費制度」があります。
また、人工膝関節置換術を受けられる方は、「自立支援医療(更生医療)」の対象となる場合があります。更生医療を申請することで、入院費の自己負担額を軽減することが可能です。
ただし、年収などの条件により自己負担額の上限が異なる場合や、制度そのものを利用できない場合もあります。詳しくは、入院がお決まりの際に受付にてご説明いたします。
当院の整形外科体制
当院では主治医制を用い、一貫した治療を行います。毎週木曜日にカンファレンスを実施し、一つの症例に対して医師間で意見を出し合い、最良の医療を提供します。
受診を迷われている方へ
膝の痛みが続くと、次第に動くことがおっくうになり、脚の筋力低下を招きます。その結果、買い物が負担に感じたり、旅行に出かけにくくなったりと、日常生活の行動範囲が狭まっていきます。
痛みを我慢したり、健康食品や自己流の対処だけで済ませることはおすすめできません。心当たりがある場合は、早めに整形外科を受診しましょう。目指すのは「痛みがない状態」だけではなく、「スムーズに歩けること」。歩行機能を維持することが、生活の質(Quality of Life)の維持につながります。