福岡整形外科病院

インピンジメント症候群

肩関節(肩峰下)インピンジメント症候群とは

インピンジメントとは“衝突”といった意味です。

肩関節は上腕骨(腕の骨)に腱板というインナーマッスルが付着しており、その上に肩甲骨の外側端の肩峰という骨の天井があります。この肩峰という骨の天井と腱板の間には肩峰下滑液包というクッションとしての軟部組織があります。

しかし頻回な繰り返し動作などの刺激などにより滑液包が炎症を起こしたり肥厚したりし、肩を挙上する際に上腕骨と挟み込まれることで疼痛を起こします。その繰り返しの中で、肩峰に骨棘(骨の棘・でっぱり)が張り出してきてさらに疼痛が起きやすい環境になっていきます(図1)

投球動作など腕をよく使うスポーツに伴って生じることもあります。

図1

症状

安静時の痛みはあまりありません。動かす時(腕を上げる時や下ろす途中)の痛みが主症状です。

自分で肩関節を横から挙上させた時に痛みが出現しやすく、大体腕の角度が60~120度付近で痛く120度を超えると衝突する領域を乗り越えるため痛みは無くなります(有痛孤徴候)(図2)

図2

検査

身体所見としてインピンジメント徴候を検査します。代表的なものとしてNeer(ニアー)の手技(肩甲骨を押さえながら親指を下にした上肢を屈曲させると痛みが出る)Hawkins(ホーキンス)の手技(90度屈曲した上肢を内旋させると疼痛が誘発される)があります(図3a.b)。

画像検査としてはレントゲンやCTの検査で肩峰下の骨棘の有無を確認します。またMRIでは合併した腱板断裂が無いか、また肩峰下に炎症が無いかを調べます。

図3a.Neer(ニアー)の手技

肩甲骨を押さえながら内旋位にした上肢を他動的に屈曲(前方挙上)すると痛みが誘発される。

図3b.Hawkins(ホーキンス)の手技

90°屈曲(前方挙上)した上肢を他動的に内旋させると痛みが誘発される。

治療

内服の消炎鎮痛剤の投与や肩峰下滑液包へのヒアルロン酸やステロイドの注射を行います。またリハビリテーションによる上腕肩甲骨の動き、姿勢の指導、腱板機能訓練を行います。

上記保存療法でも効果が無い場合には手術療法を考慮します。肩関節鏡による肩峰下除圧術(天井の肩峰下の骨棘や増生した炎症滑膜・滑液包を除去する)を行います(図4.5)

図4

図5

肩関節鏡では関節を大きく切開する事なく、5mmほどの小さな傷が3~4箇所で低侵襲に治療を行うことができます(図6)

図6.肩関節鏡手術の傷

監修
富永 冬樹

整形外科医師
井浦 国生

日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会 指導医